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氷桜・メノ・カルマ・ダイス・久流理のお話。
久流理視線です。
地下一階、地上二階建てのこの家に今日も一人の男の声が響き渡る。
計三階建てのこの家の一階部分は診療所になっており、その診察室に一人の男が準備をしていた。
久流理という名前の青年は元科学者の医者だ。
否、正確にいえば最初は医者だった。
医者になり救える者は救ってきた。ただ限界を感じた。
今のままでは救えるはずの患者は救えない。
彼は科学者となる事で救えなかった患者を救おうとした。
結果として道を外れた。
人体実験の毎日に葛藤し続け、壊れかける前に事件が起き、周りを救う為に医者へ戻った。
そして実験施設から共にいる事が多い人物と今では一緒に暮らしている。
ダイスという名の彼は元は人体実験の被験者だ。
開発された薬の投与を与えられ続け、彼は痛覚が麻痺している。麻痺させないと生きていけなかったのだ。
この痛みは快楽だと脳に錯覚させ、それが本当になるほどに彼は施設に何年もいた。
それは久流理が来るよりもずっと前からで、久流理もダイスがその施設に何年いるのかを知らないし、ダイスという名前は本名ではない。
正確には「ダイアンサス」という。略して「ダイス」
この名前は久流理の先輩学者がつけた名前で、その先輩は件の事故で死んだ。
その先輩学者ですらダイスがどこから来たのか何年施設にいたのか分からないほどに素性が分からない青年なのだ。
なぜ、そんな素性の知れない奴と一緒に暮らしているのか。
自身の過去を忘れない戒めだと煙草を吹かせながら、家の主に呟いた。
「ダイス、今度消毒液ぶちまけたら、お前の腹ぶちまけるぞ」
「あはは!それは楽しそうだね!でもヤダからぶちまけないようにする~♪」
そんなダイスは笑いながら、薬品棚にいろんな種類の瓶を置く手伝いをしていた。
すると二階からドタドタと慌ただしい駆け足が階段を駆け下りてくる。それに気付いた久流理とダイスはとあるドアを開けた。
そのドアは居住スペースである二階と一階を繋ぐ階段横にあるドアで、開けた途端茶色い髪の少女が診療室に入ってきた。
彼女はメノ。これでも30オーバーという詐欺的容姿だ。
楽しそうに笑いながら入室し、二人の横を通り過ぎ、続いて入室したのは氷桜という同居人。
この家の家事全般を担っている元騎士である。
氷桜はまるでイタズラした子供を追いかける母親もしくは父親のような形相だ。
「うぅ・・・っ」
「んん~?あれれ~?」
最初に小さな声に気付いたのはダイス。
そんなダイスの様子に気付いた久流理が彼の視線の先を見やると子供が半泣きの状態で立っている。
二人はその子供の容姿が見た事あった。
「もしかして~・・・カルマ?」
「うっ・・・は、い・・・ぐすっ・・・」
カルマと呼ばれた子供は二人を見上げる。
この家にはもう一人の住人がいる。それがこの子供、もとい青年であるカルマ。
風を読み、雲を見て、太陽の位置と夜空の星の状態を見る事で天気を見る、天気予報士のような仕事をしている。
ただ気が弱い性格をしており、年下にも腰が低い。
これでも出生は中流貴族と出はいい。
メノと氷桜とカルマ・・・三人はとある派閥争いの最中に出会う。
三人とも対立派閥に所属し、それぞれの思想の元、争いに参加し、そしてそれも終わった。
騎士の副団長を務めていた氷桜は騎士を止め、メノも探している事があったので、国を出た。
カルマは実家に反発した事で帰り辛いと思っていたところをメノに強引ではあるが連れて行かれ、気付けば三人で暮らしていた。
意外と三人の生活は充実しており、そこに久流理とダイスが加わった。
気付けば毎日が楽しくも忙しいそんな毎日。
「め、メノ様に・・・」
「実験体にされたか」
「どんな薬飲んだの!?僕も飲みたかった~♪」
「見ての通り、子供の姿になりました・・・ぐすん」
久流理は思っていた。
同じ科学者でもこうも違う物を作るヤツがいるんだな、と。
久流理が作っていたのは助ける物と言いつつ、実際は苦しめ、私利私欲の為の薬。
メノが作っているのは完全に私利私欲だが、楽しく、周りを巻き込むも笑わせられるような内容の物ばかり。
まあ、自分は子供になりたくはないがなとも考える。
「以前作ってた俺に飲ませたやつですね・・・それ」
「改良版じゃぞ?以前は十歳程度しか若返らんかったが今回は飲んだらもれなく全員が十歳!」
「解毒剤は?!」
氷桜の言葉にメノはフッと笑った。
その表情の意味を知っている、そして経験したことある彼は悟った。無いんだな・・・と。
そして再び二人の出ていき、住居内鬼ごっこが再開された。
これもよくある事だと溜め息を吐き、久流理は診療所側の出入り口を開けた。
診療所を手伝ってくれる神社の巫女がそろそろ来る時間だ。
「もうそろそろ仕事だから、ダイスも鬼ごっこ行って来い」
その言葉にダイスは輝く笑顔で出て行った。
窓を開け、椅子に座り、煙草を吹かせて考えた。
あんな殺伐とした世界にいたのに、今となっては嘘のような日常だと。
家中に響く足音と声は平和なんだと思い、久流理は小さく微笑んだ。
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